UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、放っておいても増えません。投稿したくなる条件を先に用意することで、初めて増えていきます。 お客様の投稿や口コミを増やしたいのに、自然発生に任せて増えていない事業者に向けて書いています。 この記事を読めば、UGCが生まれる条件からハッシュタグ設計、投稿を後押しする仕掛け、集めたUGCの活用法までの一連の導線設計が分かります。


UGCとは何か:なぜ「増やす」設計が必要なのか

UGCとは、User Generated Content(ユーザー生成コンテンツ)の略で、企業ではなく生活者や顧客が自発的に作成・発信するコンテンツのことです。SNSの投稿、写真、動画、口コミサイトのレビューなど形式は問いません。共通しているのは「顧客本人の言葉・視点で発信されている」ことです。

なぜ今、多くの企業がUGCを増やしたいと考えるのか。理由は3つです。1つ目は信頼性。企業が自社の商品を「良い」と言うより、第三者である顧客が「良かった」と言う方が説得力が高い。2つ目はコスト。UGCが増えれば、コンテンツ制作の一部を顧客が担ってくれます。3つ目は購買検討の後押しです。広告やLPで良さそうだと感じた人が最後に検索するのは「実際に使った人の声」です。ここにUGCがあるかで、購入の背中を押せるかが変わります。

UGCの主な種類

種類具体例主な発生場所
SNS投稿(タグ付け)商品・店舗の写真とハッシュタグ付き投稿Instagram・X・TikTok
レビュー・口コミ星評価付きの感想投稿Googleマップ・口コミサイト・ECモール
動画レビュー開封動画・使用感の動画TikTok・YouTube・Instagramリール

なぜUGCは企業発信より強いのか

企業の発信とUGCは、同じ「商品が良い」というメッセージでも、受け手に届く強さがまったく違います。

観点企業発信コンテンツUGC
信頼度「広告だから」と割り引かれる第三者の言葉として信じられやすい
コスト撮影・編集・企画の工数がかかる顧客が自発的に作る(工数は導線設計側)
コントロール性表現を完全に管理できる表現は管理できない(良くも悪くも)

UGCはコントロールできない分、企業発信よりも「本音」に見えます。この「コントロールできなさ」こそが信頼の源泉です。


UGCは「自然に増える」ものではなく「増やす」もの

多くの事業者が最初につまずくのは、「良い商品を作れば、勝手に投稿は増える」という前提です。実際はそうなりません。買っただけでは投稿しない人がほとんどです。投稿する動機・きっかけ・置き場所の3つが揃って、初めてUGCは生まれます。

体験に満足したお客様が100人いても、自発的に投稿するのはごく一部です。多くの人は「投稿するほどではない」「仕方が分からない」「誰も見ない」と感じて何もせずに終わります。手を打たない限り、UGCは「たまたま熱量の高い人だけが投稿するもの」のままです。

UGCが生まれる3つの条件

UGCが継続的に生まれる状態を作るには、以下の3条件を意識的に揃える必要があります。

条件内容揃っていないとどうなるか
1. 語りたくなる体験がある期待を超えた・意外性がある・見た目に特徴がある「普通に良かった」で終わり、言葉にならない
2. 投稿するきっかけがある声かけ・タイミング・後押しの一言がある満足していても投稿する発想自体が浮かばない
3. 投稿する場所・型があるハッシュタグ・テンプレート・投稿しやすい導線がある投稿意欲があっても「何を書けばいいか」で止まる

自社にUGCが生まれる条件が揃っているかのチェックリスト

  • [ ] 自社の商品・サービスには、写真や言葉にしたくなる「特徴」がある
  • [ ] 購入直後・利用中・利用後のどこかで、投稿を促す声かけをしている
  • [ ] 専用のブランドハッシュタグを用意し、周知している
  • [ ] 投稿してくれたお客様に対して、企業側が何らかの反応(いいね・返信・紹介)をしている

2つ以上「いいえ」がある場合、UGCが増えないのは商品力ではなく導線設計の問題である可能性が高いです。


ハッシュタグ設計:投稿の「置き場所」をつくる

ハッシュタグは、バラバラに発生するUGCを1箇所に集約するための「置き場所」です。ここの設計が甘いと、投稿してもらえても後から探せず、活用できません。

ブランドハッシュタグの役割は2つです。1つは「集約」。自社に関する投稿を検索・一覧できる状態にすること。もう1つは「投稿の後押し」。お客様は「何を書けばいいか」ではなく「このタグを付ければいい」という具体的な行動に変換できます。迷わせないことが、投稿のハードルを下げます。

良いハッシュタグの条件

条件理由
短く、打ちやすい長い・複雑だと入力の手間で離脱する
読み方が一発で分かる読めない・意味不明だと使われない
既存の一般ワードと被らない被ると自社投稿が埋もれて検索できない
1商品・1キャンペーンにつき1〜2個に絞るタグが多いと何を付けていいか迷い、結局付けない

ハッシュタグ設計の手順

ステップやること
1. 目的を決める「投稿を集める」のか「キャンペーン専用」なのか目的を1つに絞る
2. 候補を3〜5個出すブランド名+商品名+動詞など、複数パターンを作る
3. 既存タグと重複していないか検索する同名タグに無関係な投稿が大量にあると使えない
4. 社内・店舗・パッケージで表記を統一する表記ゆれ(大文字/小文字・スペース有無)を作らない
5. 周知導線を用意するPOP・レシート・投稿完了画面などに明記する

「#ブランド名の商品名」のように短く独自性のあるタグは機能しますが、「#おいしい」のような一般語や、「#期間限定〇〇キャンペーン2026春第2弾」のような長いタグは、埋もれるか打ってもらえず機能しません。

ハッシュタグは「作って終わり」ではありません。パッケージ・レシート・店頭POP・SNSプロフィール・投稿完了ページなど、お客様が投稿しようと思った瞬間に目に入る場所すべてに置いてください。1要素ずつ、置く場所を確認していくと、抜けている接点が見えてきます。


投稿を後押しする仕掛け:特典・キャンペーン・紹介設計

体験が良くても、多くの人は「わざわざ投稿するほどでは」と感じて行動しません。この「わざわざ」を超える後押しが、特典・キャンペーン・紹介設計です。大事なのは、特典を「投稿の対価」ではなく「投稿のきっかけ」だと捉えることです。対価として設計すると投稿の質が定型文に寄り、きっかけとして設計すると、最初の一歩を後押しするだけでその後の言葉は本人の実感になります。

特典の種類と向き不向き

特典タイプ内容向いている商材注意点
割引・クーポン次回購入時の割引リピート前提の店舗・EC値引き前提の客層が増えるリスク
プレゼント・ノベルティ投稿者に小さな特典を進呈単価が低く物量で回せる商材原価とのバランス設計が必要
紹介・掲載公式SNS・サイトで紹介する「見られたい」欲求が強い客層掲載基準・許諾ルールを事前に決める

UGCは紹介(リファラル)施策とも相性が良い設計です。投稿を見た友人・フォロワーが投稿者経由で来店・購入する流れができれば、UGCが集客導線そのものになります。紹介コードをハッシュタグ投稿と併用すると、「投稿した人」と「投稿から来た人」の両方を追え、効果測定がしやすくなります。

キャンペーン設計のチェックリスト

  • [ ] 特典の原価が、想定投稿数に対して事業として成立する設計になっている
  • [ ] 「投稿すれば必ずもらえる」のか「抽選」なのかを明確にしている
  • [ ] 景品表示法上の金額上限(懸賞の種類による規制)を確認している
  • [ ] キャンペーン終了後も投稿を検索・活用できる導線(ハッシュタグ)が残る設計になっている

特典設計で最もつまずきやすいのが、景品表示法とステルスマーケティング規制です。2023年10月から、事業者の依頼・関与によるにもかかわらず第三者の感想であるかのように見せる表示は規制対象になっています。特典と引き換えに投稿を依頼する場合は、「PR」等、広告・提供関係が分かる表記を投稿者に案内してください。


投稿しやすい導線をつくる:購買体験の中に仕掛けを置く

ハッシュタグと特典を用意しても、それを「思い出すタイミング」がなければ投稿は生まれません。導線設計とは、購買体験のどのタイミングで、どんな後押しをするかを決めることです。

投稿意欲が最も高いのは、感情が動いた瞬間です。商品を開封した瞬間、料理が運ばれてきた瞬間、施術直後の変化を見た瞬間。この瞬間から時間を空けずに投稿できる導線を作ることが基本です。時間が経つほど、投稿しようという気持ちは薄れていきます。

導線を置く代表的なタッチポイント

タイミング施策例
購入直後(店頭・EC)レシート・納品書にハッシュタグとQRコードを印字する
開封・利用開始時パッケージ内に「投稿してみませんか」のカードを同梱する
利用中・体験中店内POP・待合スペースに撮影スポットを用意する
利用後(メール・LINE)サンクスメールで投稿方法とハッシュタグを案内する

「映える」を無理に狙わない

導線設計というと、大掛かりな撮影スポットや凝った演出を考えがちです。ですが中小企業が優先すべきは「思い出した時にすぐ投稿できる仕組み」であって、「映える設計」そのものではありません。QRコード付きのカード1枚、レシートへの一言。この積み重ねの方が、無理のない継続的なUGCにつながります。データと仮説を往復させながら、効果の薄い施策は削っていってください。


集めたUGCの活用:リポスト・広告・LP掲載

UGCは集めて終わりではありません。活用することで、次に見た人が「自分も投稿してみよう」と思う循環が生まれます。活用されないUGCは、投稿者にとって「反応がなかった」という体験で終わり、次の投稿意欲を下げます。

リポストの手順とマナー

公式アカウントでのリポスト(再投稿)は、最も手軽で効果の高い活用方法です。ただし無断転載はトラブルの元になります。投稿者に許諾を得て(コメントやDMで一言確認する)、投稿者のアカウントを明記し、感謝のコメントを添えてください。この一手間が「見てもらえた」という体験になり、次のUGCを呼び込みます。

広告クリエイティブへの転用

UGCは広告クリエイティブとしても機能します。企業が作り込んだ広告よりも、実際の利用者が撮った写真・動画の方が広告らしさが薄く、スクロールを止める力を持つことがあります。転用する際は、投稿者から広告利用の許諾を別途取ってください。SNS上での再投稿への許諾と、広告配信での利用許諾は別の話です。混同すると後からトラブルになります。

LP・サイトへの掲載

UGCは、LP(ランディングページ)やサービスサイトの「お客様の声」セクションでも強い効果を発揮します。LP改善を100本以上見てきた経験から言えるのは、企業が書いた「お客様満足度98%」のような数字よりも、実際の投稿のスクリーンショットや写真の方が、閲覧者の目を止め、読み進めてもらえるということです。UGCをそのままの見た目でLPに埋め込むと、「作られた声ではない」という印象が伝わり、信頼形成に直結します。


中小企業がつまずく3つのポイント

1. 許諾を取らずに転載する

投稿を見つけたその場でスクリーンショットを取り、確認なしにサイトや広告に使ってしまうケースが少なくありません。著作権・肖像権はお客様本人にあります。転載・広告利用のたびに、必ず一言確認を取ってください。この一手間を惜しむと、信頼を作る施策が逆に信頼を損なう事態を招きます。

2. 特典目当ての投稿が増えて「やらせ」に見える

特典を強くしすぎると、投稿の中身が特典への言及ばかりになり、「宣伝のための投稿だ」と伝わってしまいます。特典は「投稿のきっかけ」であって「投稿の目的」にしないこと。特典の強さと投稿の自然さは、多くの場合トレードオフの関係にあります。

3. キャンペーンを一度やって終わり、仕組み化しない

期間限定のハッシュタグキャンペーンを1回実施して満足してしまうケースです。UGCは単発施策ではなく、購買導線に組み込んだ「仕組み」として運用して初めて積み上がります。終了後も、ハッシュタグとレシート・POPでの案内は残しておいてください。


テマヒマ/平岡の視点

UGCの相談を受けるとき、最初に伝えているのは「UGCはマーケティング施策である前に、お客様との会話である」ということです。投稿に「見ています」「ありがとうございます」と反応を返す。ここが抜けている企業が驚くほど多い。反応がゼロの状態は、お客様からすると「話しかけたのに無視された」のと同じです。

UGC設計で迷わせないために意識してほしいのは、「お客様に求める行動を1つに絞る」ことです。条件を重ねるほど、投稿のハードルは上がります。1要素ずつ確認して、削れる条件は削ってください。「このハッシュタグを付けるだけでいい」というシンプルな導線の方が、結果として投稿数は増えます。

もう1つ大事なのが、データと仮説の往復です。どのタッチポイントで声をかけた時に投稿が生まれやすいか、どんな特典の時に投稿の質が下がるか。最初から正解は分かりません。小さく試して、投稿数と投稿内容を見て、次の導線を調整する。この往復を続けられる企業だけが、UGCを「たまに来るラッキー」から「毎月一定数生まれる仕組み」に変えていけます。

UGCは畑に似ています。種(体験)を用意し、水(声かけ)をやり、畑の形(ハッシュタグ・導線)を整えて、初めて実ります。種を蒔いただけで放置しても、何も育ちません。派手な一発キャンペーンより、地道な導線づくりの方が長期的には強い資産になります。


よくある質問(FAQ)

質問回答
Q1. UGCと口コミ・レビューの違いは何ですか?UGCは「ユーザーが自発的に作成するコンテンツ」全般を指す広い概念で、口コミ・レビューはその一種です。SNS投稿・写真・動画・口コミサイトの評価文はすべてUGCに含まれます。
Q2. ハッシュタグキャンペーンで景品表示法に触れることはありますか?特典の金額・提供方法によっては、景品表示法上の懸賞規制の対象になります。また特典と引き換えの投稿依頼は、ステルスマーケティング規制の対象にもなり得るため、PR表記の案内が必要です。
Q3. お客様の投稿を無断で公式SNSやサイトに転載してもいいですか?避けてください。著作権・肖像権は投稿者本人にあります。リポストやサイト掲載の前に、コメントまたはDMで一言許諾を取る運用にしてください。
Q4. UGCが集まらない場合、何から見直せばいいですか?まず「投稿するきっかけ」があるかを確認してください。多くの場合、商品力ではなく、投稿を促す声かけとハッシュタグの周知が不足しています。本記事のチェックリストで抜けている項目から着手するのがおすすめです。
Q5. BtoBの商材でもUGCは有効ですか?BtoCほどの投稿量は見込めませんが、有効です。導入企業の担当者による使用感の投稿などが該当します。特典設計より、紹介・掲載による「見られる機会の提供」の方が響きやすい傾向があります。
Q6. UGCを増やすのにどれくらいの期間がかかりますか?導線を整えてすぐに大量発生することは稀です。声かけの定着と投稿者への反応の積み重ねを数ヶ月続けて、ようやく投稿が安定的に生まれます。短期の一発キャンペーンより、継続する仕組みとして捉えてください。

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著者情報

平岡 大輔

株式会社テマヒマ 代表取締役 / マーケGYM主宰

事業会社と支援会社の両方で、20年以上マーケティングの現場を経験。著書『売れるランディングページ改善の法則』など、現場で培った判断基準をもとに発信しています。

20年以上の実務経験 LP100本以上の制作・改善 事業会社・支援会社の両側を経験
平岡大輔

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